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エーブック店長よりコメント
名古屋から京都は意外と離れているように思われますが、120キロほど。
ウチからですとほとんど高速道路で移動できますので京都駅まで車で2時間です。
ということで、時々遊びに行きます。
といっても、改めて「遊ぶ」ということではなく、仕事を絡めて。
昨日も日帰りで。
午前中はみやこメッセで開催されている古本まつりへ。
昨年もお伺いしたのですが、初日の午後からでしたので、今年は初日の朝一番に行ってみました。
いやぁ、凄い行列。
まだまだ本好きの人はいらっしゃいますね。
みやこメッセの古本まつりは古本屋の催事としては日本で最大級と言われています。
私も自分が時に出店したり、時にお客さんとして、あちこちの古本の催事に行っていますが、これだけの会場の広さは他に知りません。
それが朝の10時の大行列が入り終わると、会場がいっぱいになるから驚きです。
今回は、藤子不二雄(足塚不二雄)の「ユートピア最後の世界大戦」がガラスケースの中に展示。
販売されていました。
この「ユートピア最後の世界大戦」は1953年、鶴書房から発売された藤子不二雄にとって最初で最後の描きおろしの単行本。
現存が確認されているのは世の中にたったの4冊。その内の一冊だということです。
当時の漫画は世の中から今ほど受入れられておらず、出版社に持ち込んでも相手にされなかったのだとか。
結局、このユートピアの原稿は手塚治虫の紹介で鶴書房から発売されることになったものの、扉絵は他の漫画家が描き、藤子不二雄以外の漫画家の作品も掲載されたり、白黒の原稿を勝手に出版社が彩色したり、別人によるコマが最後に付け加えられたりしたそうで、藤子不二雄にとってはかなり苦い経験だったようです。
ちなみに販売されていた価格は300万円。
現存するのが4冊ということを考えれば妥当でしょう。
冗談で知り合いの古本屋から「買っていき」と言われましたが、とてもとても。
私は復刻で十分です。
小学館から他の人が描いた最後のコマをそのまま残した復刻が発売されており、こちらならば4000円で購入可能です。
午後からは折角京都に来たのだからと、友人と一緒に、相国寺へ。
十四世紀末、足利義満により創建されたお寺です。
豊臣秀頼の寄進により再建された法堂の天井には狩野光信筆の蟠龍図が描かれており、圧巻の迫力。
隣接する相国寺承天閣美術館では石踊達哉展が開催中でした。
伊藤若冲の「葡萄小禽図」「月夜芭蕉図」は常設の展示。
伊藤若冲は現在、古本の業界でも凄く人気で、画集なども高値取引されています。
伊藤若冲はそもそも18世紀初頭に京都の青物問屋に生まれた画家で、経歴や作風が『異色』と言われています。
というのはお店を弟に譲って絵の道に入ったのが40歳という年齢だったこと。
絵が好きすぎて、縁側に放し飼いにしていた鶏を描き続けたといったエピソード。
羽の先まで執拗に描きこんだ植物などの作風は日本文化の象徴とされた「わび」「さび」からは外れてしまっていた為、長く日陰の存在とされていました。
しかし、1970年、今から45年ほど前に辻惟雄の著「奇想の系譜」に若冲が取り上げられたことで注目。
2000年に京都国立博物館で開催された大回顧展で人気は不動のものとなったそうです。
伊藤若冲の作品の魅力を知るとともに、一冊の本が歴史を変える。
一人の日陰にいた画家を陽をあてる。
改めて本の持つチカラを感じるエピソードです。
店長である私が京都に行っている間も、持込を頂き、妻が対応させて頂きました。
改めて本を見せて頂きましたが、私も同じ価格をお支払いするだろうなと思え、ホッとした次第です。
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