この「いすゞ全輪駆動車 SKW型(58年型防衛庁仕様)取扱説明書」は、昭和58年(1983年)に防衛庁(現・防衛省)向けに納入された特別仕様のいすゞ製全輪駆動車(4WD)「SKW型」の正しい運用・取扱方法を解説した公式マニュアルです。本書は、いすゞ自動車株式会社によって発行されたもので、主に自衛隊に配備された車両の操縦者や整備担当者を対象としています。
表紙には「いすゞ全輪駆動車 SKW型(58年型防衛庁仕様)取扱説明書」と明記されており、車両が特別な用途、すなわち防衛庁による運用を前提に製造されたことが分かります。「58年型」は、納入年度である昭和58年を意味しており、その年に防衛庁へ正式に導入された仕様であることを示します。

2ページ目には、キャンバストップ(幌型)を備えたSKW型車両の写真が掲載されており、その無骨かつ実用的なデザインは、軍用車両特有の頑丈さと高機能性を物語っています。車体は全輪駆動で、険しい地形や悪路でも高い走行性能を発揮する設計となっており、災害派遣や演習時の物資輸送、兵員輸送など多岐にわたる任務に対応可能です。

説明書の冒頭では、「この度は、いすゞディーゼルトラックをお買い上げいただき誠にありがとうございます」と始まる定型文が掲載されており、一般的なトラック用マニュアルと同様、ユーザーが車両を安全かつ適切に使用するための注意点や整備情報が記されています。また、「ご使用の前には、必ず本書をよくお読みいただき…」という一文からも、車両の安全な取り扱いが強調されていることが分かります。
本書には、操作方法や点検整備、故障時の対応方法に加え、各部名称や計器類の機能、各種スイッチやレバーの操作説明、エンジンや駆動系の構造についても詳しく記載されていると考えられます。また、車体に貼付されたコーションプレート(注意ラベル)や製造銘板についての解説も含まれており、使用者が車両の状態を常に正確に把握できるよう配慮されています。
このようなマニュアルは、単なる操作ガイドにとどまらず、防衛装備品としての車両の整備記録や管理台帳としても重要な役割を果たします。特に陸上自衛隊のように車両を長期にわたって使用する組織においては、こうした公式資料が運用と整備の基盤を支えているのです。
「いすゞ全輪駆動車 SKW型(58年型防衛庁仕様)取扱説明書」は、単なるトラックのマニュアルではなく、当時の日本の防衛体制と自動車工業技術の融合を象徴する資料でもあります。希少な資料として、自衛隊車両の研究や軍用車の歴史に興味を持つコレクター・研究者にとっても価値ある一冊です。