推しが転生した――そのとき、昔のグッズの価値はどうなる?
かつてアイドルグループやグラビアなどで活動していた人物が、女優、K-POPアーティスト、タレントとして再び注目を集める――そんな「転生」のような再デビューや再評価の流れが増えています。
サバ番と呼ばれるオーディション番組では、元AKBグループ、元ハロプロ、元子役アイドルと紹介される練習生もよく見かけるようになりました。
では、そんな“転生した推し”をずっと追いかけてきた人たちが持っている古い写真集や雑誌、サイン入りグッズは、中古市場で高く売れるのでしょうか?
また、いまから「原点コレクション」を集めておく価値はあるのでしょうか?
本記事では、古本屋としての実体験を交えながら、転生によって本当に価値が上がるケースと、そうでないケースを見ていきます。具体例として、宮脇咲良さんや笠原桃奈さん、松本若菜さん、小池栄子さんなどを取り上げつつ、中古市場のリアルな動きを読み解いていきます。
「転生」がコレクション価格に与える影響
自分がかつての推しが違う形でブレイクした!押し入れに眠っていた昔のコレクションが、今なら高く売れるかも?
そう思うのは当たり前のことです。
単純に自分がこの推しは素晴らしいと思っていたのが、世の中に改めて評価されたわけで、自分の審美眼が間違っていなかったことに感動もしていることでしょう。
結論から言えば、「転生したからといって、その人物の過去のグッズや写真集が自動的に高額になることはほとんどありません」。たとえば、アンジュルムからME:Iに転生した笠原桃奈さん、HKT48からIZ*ONE、LE SSERAFIMに転生して世界的なスーパースターとなった宮脇咲良さんも、知名度は上がり、新たなファンが爆発的に増えたものの、旧時代のグッズがプレミア化しているかといえば、そんなことはありません。
一方で、例外もあります。たとえば、現在はゴールデンタイムの主役女優として地位を築いた松本若菜さんのように、過去の水着写真集などが高騰しているケースもあります。
アイドルから別グループやアーティストとして転生
笠原桃奈
2021年にアンジュルムを卒業。2023年にオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』に登場、見事1位合格。2024年4月ME:IのリーダーMO
MONAとして再デビューしました。
アンジュルム時代の会場は武道館だったのが、ME:Iではアリーナツアー。
アンジュルム時代は一度も出演がなかったミュージックステーションにはME:Iとしてはデビュー前から出演しています。
テレビも見ない日はないという活躍ぶりですね。
『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』やME:Iではじめて笠原桃奈さんのファンになったという人も多数います。
しかし、ハロプロ時代に単独の写真集を発売していますが、多少値上がりしているものの、定価を大きく超えるほどの高騰は見られません
2021年11月に武道館で行われた『アンジュルム コンサート2021「桃源郷 ~笠原桃奈 卒業スペシャル~」』のDVDも同様に少し値段があがっただけで、市場価格は比較的安定しています
これは私の古本屋としての経験からですが、ME:IのMOMONAさんは供給が非常に多く、ファンは今のMOMONAさんを追うだけで十分満足しているということ。
そして、今のMOMONAさんが好きなのであって、過去にはあまり興味がないからではないかと思えます。
宮脇咲良
宮脇咲良さんはHKT48・AKB48で活動後、韓国のグローバルグループIZ*ONEとして再デビュー。さらにLE SSERAFIMで世界的な人気を獲得し、日韓を代表するアーティストへと成長しました。48グループ出身者の中でも最も成功した「転生」のひとりとされています。
宮脇咲良さんはHKT48・AKB48は水着姿のグラビアで雑誌によく登場していました。
今や世界的なスーパースターの絶版になっている雑誌に掲載されたグラビアは貴重なのではと思うのですが、プレミアムがつくようなことはありません。
2015年に発売されたファースト写真集「さくら」は、現在は古本価格で1000円以下。
水着姿や制服姿が多数掲載されているのですが、LE SSERAFIMのSAKURAさんのファンはあまり興味がないようですね。
ただし、この写真集のメイキングDVDは少し高く売れています。
Taka(ONE OK ROCK)
ONE OK ROCKのボーカルであるTaka(森内貴寛)さんは、1988年4月17日生まれ、東京都出身。演歌歌手の森進一と森昌子の長男として生まれ、2003年にジャニーズ事務所のグループ「NEWS」のメンバーとしてデビューしましたが、学業を理由に同年中に脱退しました 。その後、2005年にロックバンドONE OK ROCKを結成し、2007年にメジャーデビュー。現在では、国内外で高い評価を受けるロックバンドのフロントマンとして活躍しています。
TakaさんもNEWS時代のものにプレミアムがついていることはありません。
転生とは少し違いますが、ジャニーズ事務所(STARTO ENTERTAINMENT)のアイドルグループとして活躍したメンバーのジュニア時代の雑誌なども高値で売買されることはほとんどありません。
ZARD 坂井泉水
このテーマで忘れてはいけないのはZARD坂井泉水さんのグラビアアイドル時代の蒲池幸子時代の名義での写真集「ノクターン」です。
一時期は十万円を超える価格で売買されていましたが、現在は海賊版が出回り過ぎたため、数千円になってしまっています。
アイドルから女優へ転生
今や女優として大活躍。大女優となっている方が、実は芸能界デビュー直後は水着仕事をしていたなんてことがあります。
この転生はプレミアムがつくことがいちばん多いケースです。
松本若菜
最近では主演女優もつとめる松本若菜さんがまさにそれですね。
仮面ライダー電王に出演していた2007年に発売された写真集「watercolor」は高額取引になっています。
また今ではなかなかしないサインが、当時は入ってたりするのもポイントが高いですね。
小池栄子
デビュー直後はグラビアアイドルとして活躍。その後、女優として、司会者として現在も活躍。
2000年代前半に発売されたカレンダーなどはプレミアム価格で売買されています。
特に朝ドラ女優になると、水着姿の写真などが封印されるのか、過去の写真集が高騰することがよくあります。
竹内結子「たけうち」
国仲涼子「素顔のままで」
原田夏希 「Vega」
などなど。
女優としての露出が減ると値段は落ち着く傾向もあります。
鈴木京香さんや山口智子さんは、水着写真集はありませんが、キャンペンガールをつとめていた時のポスターなどは高額で取引されています。
アイドルからバラエティアイドルに転生
朝日奈央さん、野呂佳代さん、最近では福留光帆さんなどがバラエティで活躍されています。
全く売れないというわけではありませんが、プレミアムがつくというほどでもないですね。
アイドルからアナウンサーに転生
平井理央
おはガールからフジテレビアナウンサーに転生
アイドル時代に「うぶごえ」と「好き。」という写真集が発売されていましたが、2005年にフジテレビのアナウンサーに内定が決まると、写真集はプレミアム価格で売買されるようになりました。
しかし、その後、同様にアイドルからアナウンサーに転生をする人がたくさん出てきましたが、平井理央さんのように過去のものが高くなるといったことは見たことがありません。
元々、平井理央さんのポテンシャルが高かったということでしょうか。
インディーズからメジャーアーティストに転生
転生とは言えないかもしれませんが、メジャーになったアーティストが、インディーズ時代に作ったCDが高額になるのはよくあります。
バンプ・オブ・チキン、GReeeeN、LiSA、岡崎体育、ユニゾンスクエアガーデン、いきものがかり、星野源、Perfumeなど多数。
しかし、インディーズ時代に自分が作ったCDは、個人が複製してもわからないのが難でもあります。
転生アイドル/タレント/アーティストのコレクション市場における共通点
ここまで見てきたように、「転生したからといってすぐにプレミアがつく」わけではありませんが、いくつかの共通するパターンがあるのも事実です。
まずひとつは、「過去の姿が現在では見られない」こと。この条件を満たすと、価値は一気に跳ね上がる可能性があります。たとえば、現在は清楚な女優として活動している人が、かつては水着グラビアを出していた――その“ギャップ”こそが、中古市場でのプレミアを生み出す重要な要素です。
もうひとつは、「供給の少なさと情報の断絶」。インディーズ時代のCDや、地域限定で配布された冊子、雑誌の特集など、一般的に知られていないアイテムほど、コアなファンにとっては貴重な情報源となります。これらは入手難易度が高く、ネットでもなかなか見つからないことが価格高騰の背景になります。
そして最後に、「新たなファン層が過去に興味を持つかどうか」。笠原桃奈さんや宮脇咲良さんの例のように、現在の活躍に魅力を感じてファンになった層が、必ずしも過去にさかのぼってまでアイテムを収集するとは限りません。むしろ、“今の彼女”に夢中な人ほど、昔の姿には興味が薄いという現象がよく見られます。
おわりに──“転生推し”を追いかける楽しみと中古市場のリアル
推しの再ブレイクや新たな挑戦は、ファンにとって大きな喜びであり、誇らしさでもあります。「あの頃から応援していた」という事実が、時を経て価値になる瞬間も確かに存在します。
ただし、中古市場の現実は冷静です。人気や話題性だけでモノの値段が上がるわけではなく、「今では見られない姿」「供給の少なさ」「コレクターの熱量」などが複雑に絡み合って、初めて“プレミア”が生まれます。
過去のグッズを掘り返すのも、これからの原点を集めておくのも、どちらもファンとしての楽しみ方のひとつ。古本屋として言えることは、「高く売れるかどうか」だけでなく、「好きなものを、いい状態で残しておくこと」が一番の価値なのかもしれません。
あなたの推しも、いつか転生するかもしれません。
そのとき、「この一冊を持っていてよかった」と思えるような出会いを、これからも大切にしてください。