- 愛知県名古屋市中川区
- 出張買取

エーブック店長よりコメント
ファッション関係の店舗を企画運営されている企業さまから大量のファッション雑誌をお譲り頂きました。
資料として使用されていたものため、切取りがあったり、書き込みがあったりするものもありますが、貴重なものゆえに全てお引き取りさせて頂き、喜んで頂きました。
その中でも人気の高いファッション雑誌『Boon(ブーン)を今日はご紹介します。
『Boon(ブーン)』は、1986年12月号を創刊号とする祥伝社発行のメンズファッション誌で、日本のストリートファッション史を語る上で欠かすことのできない存在である。当初は月刊ではなく季刊誌としてスタートし、「男の一人暮らし」をテーマにした「私空間創造マガジン」と銘打たれていた。しかし創刊直後に掲載された古着特集が大ヒットし、時代の空気を敏感に反映して誌面は急速にストリートファッション色を強めていった。90年代の古着ブームを背景に部数は飛躍的に伸び、月によっては発行部数60万部を突破するなど、ストリートファッション誌という新しいジャンルを確立した。
この成功は同業他社に波及し、『GET ON!』や『COOL TRANS』といった競合誌の誕生を促すこととなった。特に1990年代半ばから後半にかけての『Boon』は、スニーカー、ジーンズ、古着、シルバーアクセサリーなど若者文化を牽引するアイテムを網羅し、まさに“ストリートファッションのバイブル”として君臨した。誌面には木村拓哉やいしだ壱成、広末涼子、PUFFYなど、当時を代表する俳優やアーティストが登場し、ファッションとエンタメをつなげるスタイルは読者を熱狂させた。
90年代初頭、渋谷センター街を中心とした“渋カジ”が流行の主流だった一方で、原宿の裏通りでは新しいカルチャーが芽吹き始めていた。藤原ヒロシらが手がけた「グッドイナフ」や、高橋盾とNIGO®︎が立ち上げた「NOWHERE」、さらに「ア・ベイシング・エイプ」「アンダーカバー」「AFFA」などのブランドは、後に“裏原宿”と呼ばれる文化の礎を築いた。『Boon』はこれらの動向をいち早く誌面に取り入れ、御三家ブランドを特集することで全国の若者に裏原カルチャーを広めていった。
その後も「ネイバーフッド」「ヘクティク」「バウンティハンター」「ナンバーナイン」など新鋭ブランドが続々と登場し、裏原宿は日本のストリートカルチャーの震源地となる。小ロット生産による希少性、人気デザイナーやアーティストのコラボレーション、限定スニーカーや特注アイテムなどが若者を熱狂させ、ショップには長蛇の列ができた。『Boon』はそれらの熱狂を逐一誌面に収め、雑誌が情報の最前線であった時代において、若者たちの「教科書」として機能したのである。
『Boon』の魅力は、単なる流行紹介にとどまらず、徹底的に掘り下げた特集記事にあった。ヴィンテージデニム特集、スニーカーカタログ、シルバーアクセサリー特集などは、詳細なデータやチャート形式で整理され、まさに資料的価値を持っていた。別冊『Boon EXTRA』シリーズも人気で、「NIKE エアマックス全搭載」などは今なお古本市場で高値を付ける。SNSのない時代、若者たちはこれらの誌面を頼りにファッション知識を深め、街のスタイルを真似し、やがて自分なりの表現へと昇華していった。
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、『Boon』は間違いなくストリートカルチャーの中心に位置していた。しかし2000年代に入ると状況は変わり始める。裏原宿の象徴的存在だった藤原ヒロシは「レディメイド」を撤退し、NIGO®︎はエイプを世界へ拡大、高橋盾はアンダーカバーをパリコレへと進出させるなど、デザイナーたちは次のステージへ進んでいった。一方で、裏原系ショップの閉店やブランドの倒産・買収も相次ぎ、ブームは徐々に陰りを見せる。雑誌市場自体もインターネットの台頭で販売が低迷し、『Boon』は判型変更やカルチャー誌的な方向転換を試みたが、2008年についに休刊を迎えた。
その後と再評価
『Boon』は2014年にムックとして復活し、「2014年秋冬号」「2015年夏号」が刊行されたものの長続きはしなかった。しかし、90年代後半から2000年代初頭にかけての裏原カルチャーとともにあった『Boon』の存在は今なお再評価され続けている。令和に入り90年代リバイバルが進むなか、当時の『Boon』は古本市場で人気を博し、当時を知らない若い世代にも「90年代ストリートの熱狂」を伝える資料として愛されている。
『Boon』は、渋カジから裏原宿、スニーカー、ヴィンテージデニムに至るまで、日本のストリートファッション史を記録した最重要メディアである。その誌面は単なる流行紹介ではなく、カルチャーそのものを熱量をもって切り取り、多くの若者のライフスタイルを形づくった。休刊から時を経てもなお、雑誌が放ったインパクトは消えず、青春の象徴として、そして文化的アーカイブとして語り継がれている。
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