語学教材スピードラーニングのCDはなぜ買取できなくなったのか?[日曜コラム]

日曜日はエーブックの店主橋本が最近の古本屋の商売から想うことを書かせて頂いています。

本日は聞き流すだけで英語が話せるようになるというスピードラーニングの買取について。

スピードラーニングのCDを買い取ってもらえますか?

以前は、このお問い合わせも珍しくありませんでした。

現在も、時々ご依頼をいただきます。

しかし現在、当店ではスピードラーニングのCD・教材について、基本的に買取をお断りしています。

「一時期あれだけ流行った教材なのに、なぜ?」

そう思われる方もいらっしゃると思います。

今回は、ネットオークションの実際の落札データを10年ほど前と現在で比較しながら、その理由をご説明します。

一世を風靡した「聞き流すだけ」の英会話教材

スピードラーニングは、株式会社エスプリラインが販売していた英会話教材です。

「聞き流すだけ」という分かりやすいコンセプトと、大々的なテレビCMで一気に知名度を上げました。

特にプロゴルファーの石川遼さんを起用したCMは、覚えている方も多いのではないでしょうか。

1989年から販売され、最盛期には多くの利用者を抱える大ヒット商品となりました。

しかし、時代が変わります。

スマートフォンが普及し、YouTubeなど無料で英語を聞けるコンテンツが増え、英語学習アプリなども登場しました。

そして2021年8月、スピードラーニングの販売は終了しています。

つまり、現在は新品の商品が新たに供給されることもありません。

10年前のネットオークションでは高く売れていた

興味深いのが、過去の中古市場です。

今回、ネットオークションの落札データを調べてみました。

スピードラーニング

2017年8月の500件と、2025年9月~2026年8月の500件を比較しています。

10年前の2017年には、スピードラーニングの落札価格の中央値は10,500円でした。

平均落札価格は約16,900円。

特に全巻セットになると価格は高く、

「1~48巻」のセットでは、中央値が約38,983円。

「全巻」と表示された商品では、中央値が約55,750円となっています。

中には5万円を超えて落札されているものもかなりありました。

当時は中古品でも、スピードラーニングそのものに相応の市場価値があったわけです。

ところが現在は……

同じように、最近のネットオークション落札データ500件を調べてみました。

2025年9月から2026年8月までのデータでは、落札価格の中央値はわずか1,500円。

10年前の10,500円から、約7分の1です。

平均価格も、

2017年:約16,900円
→ 現在:約2,480円

まで下がっています。

さらに48巻セットを見ても、

2017年:中央値 約38,983円
→ 現在:中央値 約3,100円

となっています。

10年前には数万円で売買されていたものが、現在では数千円になっているのです。

「全巻揃っていれば高く売れる」という商品でもなくなった

もう一つ大きな変化があります。

2017年には、全巻セットになると入札がかなり集まっていました。

ところが最近のデータでは、48巻セットでも入札数の中央値は1件。

16巻セットについても、

2017年:約17,750円
→ 現在:約1,200円

まで下落しています。

つまり、単純に「人気が少し落ちた」という程度ではありません。

中古市場そのものが大きく縮小していると考えたほうがよさそうです。

なぜ、こんなに安くなったのでしょうか?

理由の一つは、スピードラーニングを必要とする人が減ったこと。

もう一つは、教材としての代替手段が非常に増えたことです。

以前なら、

「英語を勉強したい」
↓
「英語教材を買おう」
↓
「スピードラーニングを買おう」

という選択肢がありました。

現在なら、スマートフォンを使えば、無料または低価格で英語の音声や動画をいくらでも利用できます。

さらに、スピードラーニングは販売終了しています。

そのため、新品の商品が販売されている頃のような「今すぐ使える現行教材」という価値もなくなっています。

古本屋にとっては、ここが問題になります

ここからは、当店の買取についての話です。

中古品は、

「ネットオークションでいくらで売れたか」

だけではなく、

「仕入れた商品が、どのくらいの期間で売れるか」

も重要になります。

例えば、10,000円で売れる商品でも、1年間売れなければ商売としては扱いにくい商品です。

逆に1,500円の商品でも、すぐ売れるのであれば扱うことができます。

ところが現在のスピードラーニングは、落札価格そのものが低くなったうえ、全巻セットであっても数千円程度のものが珍しくありません。

しかも48巻ともなると、保管するにもかなり場所を取ります。

検品、清掃、動作確認、写真撮影、出品、梱包、発送。

こうした作業を考えると、販売価格が数千円では、買取価格を付けることが難しくなります。

だから「価値がない」のではありません

ここは誤解していただきたくないところです。

スピードラーニングが教材として役に立つかどうかと、中古市場で商品として買い取れるかどうかは別の話です。

今でも、

「昔買ったけれど、もう一度聞いてみたい」

という方はいるでしょう。

実際、ネットオークションでも落札されている商品はあります。

ただし、「売れる」ことと「古本屋が買取できる価格で仕入れられる」ことは同じではありません。

10年前なら数万円で取引されていた商品が、現在では数千円。

この価格差では、当店のような中古品を扱う店が買取商品として取り扱うことが難しくなります。

時代とともに「中古品の価値」は変わります

スピードラーニングは、その変化が非常に分かりやすい商品だと思います。

10年前には人気教材として高値で取引されていたものが、現在では大量に中古市場へ流れ込み、価格が大幅に下落しています。

そして2021年にはメーカーによる販売も終了しました。

かつて一世を風靡した商品だからこそ、

「きっと今でも価値があるだろう」

と思われるかもしれません。

しかし中古市場では、人気だった商品ほど、同じものが大量に残っていることがあります。

スピードラーニングもその一つです。

当店で現在、スピードラーニングのCD・教材の買取をお断りしているのは、商品そのものが悪いからではありません。

現在の中古市場での販売価格と、保管・検品・出品などにかかるコストを考えると、買取商品として価格を付けることが難しくなったためです。

これも、20年以上古本を扱ってきて感じる「商品の価値は時代とともに変わる」という一例です。