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エーブック店長よりコメント
先日、お譲り頂いた1970年代の映画ポスターの中から、スパイダーマンをご紹介します。
このポスターは、1978年に日本で公開されたアメリカ製実写映画『スパイダーマン』(原題 “Spider‑Man”/1977年CBSテレビ映画版)の劇場用B2判宣伝ポスターです。主演は「サウンド・オブ・ミュージック」の長男役で知られるニコラス・ハモンドさんで、もともと米国ではテレビスペシャルとして放送された作品が海外では長編映画として配給されました。日本ではコロムビア映画(現ソニー・ピクチャーズ)系の劇場でロードショー公開され、マーベル・コミックス原作ヒーローの実写映画が国内で上映された最初の例となりました。
ポスター上部には「爆発的ブームを全米にまき起こしたスーパー・ヒーローがやって来る!」という力強いキャッチコピーが大きく配置されています。当時の日本ではマーベル作品が一部のファンにしか知られていなかったため、配給側は「全米」という言葉で未知のヒーロー像を強調したのです。続くコピー「人間の能力をはるかに超えた驚異のパワーで、敢然と悪をやっつける こいつは何者か!」は、スパイダーマンの超人的な身体能力とミステリアスな魅力を訴求しています。
メインビジュアルは、ニューヨークの摩天楼を背景にスパイダーマンが画面対角線上に跳躍するダイナミックな構図です。広角レンズで俯瞰撮影した実写の都市景観にヒーローを合成し、「都会派ヒーロー」のイメージを直感的に伝えています。赤と青のコスチュームはテレビプロップそのままの質感で、コミック版に比べて目のレンズが小さいのが特徴です。右手を力強く握りしめ、左手はウェブシューター発射寸前のポーズを取ることで、劇中アクションへの期待を高めています。
タイトルロゴ「スパイダーマン」は角ばったゴシック体を黄色地に黒フチで大胆にレイアウトし、右肩上がりの斜体処理で疾走感を演出しています。これは当時流行していたロボットアニメのロゴデザインとも共通する日本的アレンジと言えるでしょう。ロゴの右下には “SPIDER‑MAN” と英語表記も併記され、原題を知らない観客への橋渡しを果たしています。
ポスター下部のクレジットには「ニコラス・ハモンド主演」「デヴィッド・ホワイターリング脚本」「E・W・スワックハマー監督」「チャールズ・フライス・プロダクション製作」など主要スタッフが記載されています。さらに “Spider‑Man is a property of the Marvel Comics Group © 1977 Marvel Comics Group, All Rights Reserved.” という著作権表記が入り、当時からマーベル側が知的財産の保護に注力していたことがうかがえます。
コレクターズアイテムとしての評価について触れますと、本ポスターは二重の意味で貴重です。第一に、同じ1978年に東映が制作した日本版『スパイダーマン』(主演:香山浩介)が放送され、その人気の陰で本家米国版の宣材は流通数が少なかった点。第二に、東映版の巨大ロボット「レオパルドン」路線と明確に差別化しつつ同時期に公開されたため、“ダブル・スパイダーマン時代” を物語る資料的価値が高い点です。
デザイン面では、アメリカのオリジナルポスターとは異なる、日本独自のレイアウトを採用していることも注目ポイントです。縦長フォーマットで空を大きく取り、文字を斜めに配置して視線を誘導する手法は、1970年代末の邦画ポスターで流行した「航空写真+大胆タイポグラフィ」の潮流を受け継いでいます。背景のビル群はマンハッタン中心部で、左端にハドソン川が見えることから、ロックフェラーセンター展望台付近から南を望んだ写真と考えられます。
総じて、このポスターは日本におけるマーベル実写映画初上陸を告げる歴史的資料であり、70年代末の海外映画ブームやテレビ映画の劇場公開、そして後に大きく飛躍するアメコミ映画の黎明期を示す貴重なアイテムです。ビジュアル面ではアメリカン・コミックの鮮烈な色彩と日本的なタイポグラフィの融合が際立ち、当時のグラフィックデザインの潮流を伝える作品でもあります。映画史、広告史、ポップカルチャー研究の観点からも見逃せない一枚と言えるでしょう。
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