【持込買取】ゴルゴ13初版（さいとうプロダクション時代）

ゴルゴ13のコミック単行本前半の初版をお譲りいただきました。

初版は、発行元が9巻までがさいとう・たかをプロダクション。

10巻からがリイド社となっています。

９巻までも再版になるとリイド社になっているものもあるようです。

Wikipediaをたどりますと、1974年11月にさいとう・たかをプロダクション出版事業部を分離して、株式会社リイド社を設立したとあります。

ということで1974年以前に発行されたものがさいとう・たかをプロダクションとなっているということですね。

さいとう・たかをプロダクション時代は巻数の表記もなく、SPコミックスとしてタイトルのみがあります。

１巻 ビッグセイフ作戦 昭和48年6月21日さいとう・プロダクション
２巻 檻の中の眠り 昭和50年7月20日第8版 リイド社
３巻 狙撃のGT 昭和48年10月25日さいとう・プロダクション
４巻 査察シースルー 昭和48年12月22日さいとう・プロダクション
５巻 帰ってきた標的 昭和49年2月14日さいとう・プロダクション
６巻 喪服の似合うとき 昭和49年4月25日初版さいとう・プロダクション
７巻 アットピンホール 昭和49年7月25日初版さいとう・プロダクション
８巻 マニトバ 昭和49年10月25日初版さいとう・プロダクション
９巻 ラオスのけし 昭和49年12月25日初版さいとう・プロダクション

さいとう・たかを氏は漫画界のビジネスモデルに大きな革命をいくつか起こしたことで知られていますね。

リイド社という自分発の出版社もそのうちのひとつと言えそうです。

1. 劇画というジャンルの確立

さいとうは、従来の漫画とは異なるリアルでシリアスなストーリーと画風を持つ「劇画」を先導しました。1955年に「空気男爵」でデビュー後、松本正彦や辰巳ヨシヒロらとともに、漫画を子供向けから大人向けのものへと変え、社会派のテーマやシリアスな内容を扱う劇画ジャンルを築きました。彼の代表作『ゴルゴ13』は、1968年から連載が開始され、長寿作品としても有名です。

2. 分業制の導入

さいとうは、漫画制作の分業制を採用した最初期の作家の一人でした。彼は「さいとう・プロダクション」を設立し、脚本家、背景、キャラクターデザインなどの役割をそれぞれ分担することで、効率的かつ量産的な制作を可能にしました。この手法により、作家が一人で全ての作業を行う従来のスタイルから、よりスピーディで規模の大きい漫画制作が可能になりました。この分業制は、後の多くの漫画スタジオに影響を与えています。

3. 映画的手法の導入

さいとうは、映画的なカメラワークや演出を漫画に取り入れました。特に、遠近感のあるコマ割り、動きのあるアングル、そして緊迫感を演出するための構図などが特徴的です。『ゴルゴ13』では、このような手法を駆使して、ハードボイルドな世界観を表現し、読者を物語に引き込む効果を生み出しました。

4. 大人向けテーマと国際的な視点

さいとうの作品は、暴力、暗殺、国際政治、スパイ活動といった大人向けのテーマを扱いました。特に『ゴルゴ13』では、世界中の政治的事件や国際的な陰謀を背景にストーリーが展開し、時事問題をも題材にすることで、漫画の読者層を大人まで広げました。これにより、日本の漫画が国際的な視点を持つ作品として認知されるきっかけとなりました。

5. 長期連載とビジネスモデルの確立

さいとうは、一つの作品を長期的に連載し続けることが収益性やファン層の維持に重要であることを示しました。『ゴルゴ13』は連載が50年以上続き、多くのファンに支持されました。この長期連載は安定的な収益をもたらし、同時に読者の信頼を築くことにも寄与しました。こうしたスタイルは他の多くの作品や作家にも影響を与え、漫画業界のビジネスモデルの一部となっています。

6. ストーリーテリングとプロフェッショナルなキャラクター造形

彼のキャラクターには、明確な職業意識やプロフェッショナリズムが感じられることが多く、特に『ゴルゴ13』の主人公・デューク東郷はその典型です。無駄な感情を排除し、冷徹かつプロフェッショナルな姿勢で仕事を遂行する姿は、多くの読者に強い印象を与え、他の作家にも影響を及ぼしました。

どんな分野でも同じでしょうが、革新的なアイデアがあっても、実力、人気がないと実現はできません。

さいとう・たかを氏の革命はゴルゴ13をはじめ、広く愛された作品があってこそと言えますね。